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2006年05月12日
「藻岩山平和塔」
長いこと札幌の市民であって、藻岩山の裾野を車で通ったり、来客を案内して藻岩山のケーブルカーに乗った時に、仏舎利塔とおぼしき白い塔を目にしている。しかし、傍まで行ったことがない。また行く気にもならなかった。札幌の秘境探検を始めて、ここは秘境くさいと狙いをつけて、藻岩の雪解けが進んで山麓の桜が咲き始めた頃、平和塔と呼ばれるこの塔のある場所に行ってみた。
藻岩山のケーブルカーの麓の駅から山道に歩いて入る。岩でごつごつした写真の山道を誰にも会うこともなく登って行く。途中はまだ新緑に染まっていない木々が続く。かなり登ったところに石の階段があり、さらに登ると前方に写真の平和塔が現れた。塔の正面中央に金色の仏陀の像が据えられている。訪れる人も居ないようで、供物台、供花台には何も置かれていない。
近くにある石版の説明文を読む。この塔は太平洋戦争の犠牲者の冥福を祈る目的で1961年(昭和36年)に建立されている。インドのネール首相が平和塔建設に賛意を表して、仏陀の真身舎利(遺骨)を贈り、これがこの平和塔に納められていると記されている。この説明文を読んで、仏陀の本物の遺骨なんて残っているのだろうか、そもそもどうして二千五百前の人とも言われている仏陀の、本物の遺骨だと断定できるのだろうか、等などの疑問が頭をかすめたけれど、答えの期待できない問題はすぐに忘れて平和塔を一周する。特に変わったものもないけれど、人の居ない山中にあるこの塔とその周囲は大都会札幌の秘境と表現してもよさそうだ。
ここからは周囲の木々が邪魔にはなるけれど、札幌の市街が一望にできる。海抜530メートルの藻岩山は、アイヌ語で「インカルシベヌプリ」ト呼ばれていて、その意味は「眺めのよい山」である。確かに、高層ビルが目立ち始めている札幌を、山の中腹にも到っていない平和塔の場所から眺めることができるこの山は、眺めの良い山である。
投稿者 esra : 2006年05月12日 03:37